メルセデスの記憶 |
メルセデスに機敏さとか軽快さが必要なのかな?と思う。
BMWが走りに徹したモノ造りをしているに対しメルセデスはあくまでも安定感と安全性を売りにしてきたとカテゴライズしているのでピンと来ない。
メルセデスはかつて一度も所有ないしは長期使用したことがないけれど過去ニアミスのような出会いがあったことも事実。
実に古い話から辿る事になるけれど・・・
出会いその-1(W116)安楽なフライングカーペット
今から25年以上も前に親しい友人が乗っていた300Dが始まりだ。
そのようなうすべったい車体は今迄乗った事も無いほどの安定感と安心感を与えてくれた記憶が今でも鮮明に思い出される。
そのステアリング(LHだったと思う)は信じられないほど大きくて立派で軽かった(笑)。
ディーゼルターボエンジンは遠くでコロコロ言うのみで静寂そのもの。ターボが効き始めると濃紺のモケットシートバックにぐぐ〜〜っと背中を押し付けられた(が、180でぴたっと止まったメーター)。
車体は常にフラットに保たれていて脚は柔らかく、しかもしっかりと地面をつかんで放さない意地を感じさせた。
交差点で不用意にアクセルを踏んで回った事もあったっけ。
しかし厚い鉄の無垢板に乗せられているようななんとも言えない浮遊感覚を今でも忘れる事が出来ない。
これが僕とメルセデスのはじめての出会いだった。
出会いその-2(W124)走るリビングソファー
その後数年して今でも親しい友人のW124のE220(?)で神戸〜松江間(約300km)をリアシートで過ごした記憶も鮮明だ。
えも言われぬスプリングの効いたリアシートはかつてのSの乗り味を思い出させてくれた。やはりメルセデスはこうなんだなあと一人感心しきりだった。
出会いその-3(W202)FR車のVWゴルフの兄貴
義父がW202を購入しその後9年間と12万キロを走行した。
都度借りてドライブに出かけた。秋の北陸へのドライブや正月の箱根も忘れられないものです。
しかしそのW202にはもはや前出の2台の面影はほとんど無かったように記憶します。
車体の剛性感こそ失われないものだったけれど、無垢板の乗り味は消滅していたのですよ。
なんて言うのかな、無垢板から固い殻になっちゃったってかんじ。
その上(個体差さもしれないけれど)高速道路での直進性の悪さが印象的で、ロングドライブに非常に気を使わせられた。
その1.9L自然吸気エンジンは非力で、回転で稼ぐタイプだったから(個人的にはスポーティーで好ましかったけれど)上り坂では大きな音で喘ぐ様がとりわけ年配オーナーには看過出来ない様子で『坂登らないんだよ』とオヤジさんは言っていた。
それでも比類無きシートの剛性感は疲れを与えない秀逸な作りで、とりわけ腰痛持ちの義母が快適に過ごせた事をことある度に話して聞かされるほど。
今思えばメルセデスが変わり始めたターニングポイントの車の一台だったということでしょうね。
出会いその-4(W210)国産車みたい
W124がデザイン的にも作り的にも『良きメルセデス』であったことは当時の私にも何となく理解出来たんですが、W210の前期型は誰が乗ってもクビを捻ったかもしれないです。
大きくなったW202って感じで、エンジン音やその質感は高級車としては充分ではなかったと思われます。
『日本車も良くなって来たなあ』ということもあるんでしょうが。
その後も友人のW140(でっかい車だったなあ)やW220(これは良いクルマだったな、デザインも)に乗せてもらったりしながらメルセデスの歴史の片鱗を味わわせていただいた(Y君に感謝)。
出会いその-4(W204)フライングカーペットアゲイン
話は長くなってしまったけれど今度のW204はデビュー当初から気になってたんです。
先代のW203のひょうたん目は個人的には好めなかったけれどこれは好き。
全体的にかちっとまとまったデザインが往年のメルセデスを彷彿させるではないか?・・・と。
ボディーを斜めに走るキャラクターラインがステップワゴンとかぶるけれど。
とりわけアバンギャルドと呼ばれるクーペ顔のセダンは(標準では)目新しいし、アジリティーというのはこのアバンギャルドの為にある言葉だと思う。
でも個人的にはエレガントとかクラシックと呼ばれる普通の顔が気に入りました。
普通だからいい。
ボンネットに輝くスリーポインテッドスターも車幅の見切りに一役買うはずでしょうし。
とりわけワゴンは切り立った形状に戻されていて荷室の有効性が飛躍的に上がったみたいです。
必要最小限の装備のクラシックとしたのは道具としての役割を明確にする為です。
ただし機能的に不足するのがディスチャージドヘッドランプだと思いリアのLEDランプとのセットで追加装備しました(都合よく輸入リストにありましたので)。
シートは平織りの超安いっぽい布(泣笑)。
このクラスでは皮革とはいっても硬く形成されたプラスチックのような素材しか選べず、ロングドライブで尻が痛くなる事は間違いないと判断してのこと(このクラスでは革は硬いですね)。
できうれば昔ながらのモケットが最高だったんですけどね。
巷で安っぽいと不評のW204の素朴な内装はこの廉価版では気にならないとも言えなくはないでしょ(やや諦め)。
一番の決め手は乗り味でした。
冒頭からしつこく書いている『メルセデスらしさ』がよみがえっていたのですよ。
乗ったのはエレガンスでステアリングフィールがビミョウに軽く設えてあると言うけれど『ああ、良いクルマだなあ』と試乗中につい口が滑ってしまったほどなめらかなその乗り味は自分自身の身体が憶えていたあの感覚だったから。
回せばエンジン音はそこそこ入って来ます、4気筒。それでいいんです。
アジリティーという意味をメルセデス流に解釈するとはこういうことなのかもしれないですね。
かつてのメルセデスを知らる人にはこちらを、そうで無い人にはアバンギャルドをというメルセデスのあらたなおもてなし理論が理解出来たようです。
初めてのメルセデス。期待を越えた存在になるかどうかは今後の経済情勢にも大きく関わって来そうですけれど....。
南アフリカで造られるこのベーシックメルセデスが今後働く道具としてその才能を遺憾なく発揮してくれる事を期待しています。
ちなみに、BMW(3シリーズ)はダウンサイジングとはいえ荷室が小さすぎでした。AUDI(A4)はプライベート性が強いデザインに思えた為却下。ボルボ(V70,V50)が荷室でポイントを稼ぐものの個人的好みと耐久性が気がかりで見送り。VW及び大型車その他国産車選択肢されず(笑)。
懸案のハイブリッドは次期尚早と判断した。
以上。