AUDI A5に乗る |
写真はレンジスポーツとのもの。
専門誌各紙での評判はすこぶる良いが個人的にどうなのか、言葉に甘えてステアリングを握らせていただいた。
当方1昨年迄プジョー406クーペというピニンファリーナの美しいベルリーナが身近にあったことから、これをFFベースのスポーツクーペの基準にしてみた。
またクラスは違うけれどやはり昨年迄我が脚となっていたミニクーパーSのゴーカート的な走りも自身の記憶に新しい。
上記の一般的なヨーロッパのFFスポーツ達とこのクアトロは何がどう違うのか。またこれが一般的なクルマ好きの自分に理解出来るものなのか。また約700万円という価格はイメージとして適正なのかという点を中心に確認した。
<走り出しからクアトロ>
低速で軽い操舵力のステアリングをさっと切りながら発進した時からFFとは明らかに違う。
トルクステアを全く感じないままトラクションを伝える感覚はレンジスポーツの“いかにも四駆”という印象のものとも違う非常に素直なものだと解る。
きっと彼の奥様も何も感じる事無く運転開始出来るに違いない。
<低く唸るエンジン>
オーナー氏の『エンジンがガバッとくるんですよ』という言葉にアクセル開度を控えめにする。
小さな交差点を右折して標高600〜800mの富士山の山麓を駆けてみた。
早速アクセルをじわっと踏み込んでみる。ガバッとくるという表現は少し修正かな?
速いは速いけど3.2LV6エンジンって何馬力だっけ?
知らずに乗っても240psはあると思う(馬力で判断するのは早計だけれど実際は265ps)。
それよりなにより質感が高い。
適度に湿度のある回転フィールが気持ちいい。音量も常に一定にコントロールされている(回転に合わせて一定に大きくなると言う意味)けれどラクシュアリーの域を越えないマナーはさすがに欧州スペシャルクーペだ。
<ハイライトは曲がり>
新車と全域ウェット路面だったため絶対速度はそこそこに抑えねばと思いつつどんどんコーナリング速度が上がっていくことに気付く。
シフトを一番下のスポーツモードに入れて(これAUDIだけかな?)パドルで減速しながらアプローチ小さなコーナー、大きめなコーナーをBSポテンザがビタ〜〜っと捉える。
エイペックスからグワッとアクセルを踏み込むと肩口迄サポートされたスポーツシートに身が沈む。トルクステアの類いは一切無いし、フロントが外へ逃げるアンダーも一切無い。ましてやリアがはらむ気配すら無いのだから参ってしまう。
ええと、なんて言うんだろ。これがクアトロシステムなのかとあらためて感心する瞬間なのかな。
『知ってる人なら感心しながら、知らない人なら知らずにとばせる』
<猫足ならぬ虎脚?>
A5は車高も低く設定されている事もあって横方向のロールは一切許さないけれど、外脚がアクティヴに突っ張る印象も無い自然なものでショックや突き上げは少々感じるけれどスポーティーというレベル。
はっきり言って乗り心地良い。
猫より脚のしっかりした虎って感じw。
<内装はちょっとガンダム>
未来的空間を標榜しているのだろう。繊細で緻密な造作でしつらえた内装は上等と言って何の差し支えも無い。
スイッチのサイズや操作感は全て適切な位置で表面処理と操作圧力が与えられていてブラインドタッチを可能にしている。
また回転計と速度計の間にあるデジタルの速度計は一見不要に思われたが、山道等で非常に見易くて(凄く速度が出ている事を具体的な数字で認識出来る)結果的に安全方向へ作用すると思われた優れもの。
一見やりすぎなデザインと思われるそれぞれのパーツやそのデザインも、実は熟考された機能の積み上げなのだと思い知らされる。『機動戦士的』ではあるけれど。
<内装、荷室>
クーペに求める事ではないけれどこのあたり欧州クーペは良く出来ている。
トランクは奥行きがあってゴルフバック二個と手荷物は簡単に積める(らしい)
トランクから後部座席を倒すレバーが左右にビルトインされているところも完成度が高く美しい。
後部座席は広々とはしていないけれどまさに必要にして充分。
このスタイリングとの引き換えが叶わない人はA4という選択になるが・・・
<個人的には好き>
緻密なものが嫌いな人に限ってはこの車はお薦め出来ない。
良く出来たものが好きな人にはこの上ない。
もっと速さを求める人にはS5が用意されているからそちらをどうぞということだ。
懸案の価格に関してもガイシャ全般での比較からいえばむしろリーズナブルとも言えるかもしれない。オープンになった時点で800万円を越えると考えると恐ろしいが、これ一台でかなりの目的をこなせると思えばまさにある意味でのMPVともいえまいか?
余韻が爽やかで毎日乗りたくなる。また、高速を一定速度で走るより、ドイツからイタリア迄一般道で走りたい(走った事無いけど)そんなクルマだった。
あとで乗り換えたレンジスポーツの脚の方が余程硬く感じた事はオーナー氏に伝えておかなければ。
ドイツの他2社と違い、しれっと乗る高級車というイメージがぴたりと合ってきたではないか?